末期がん患者が元気になる「メタストロン治療」の実力とは
「放射線の飛距離はわずか数ミリで、半減期も50日ほど。近接する健康的な臓器への被曝の可能性も低いのです」
しかも、ベータ線ががん細胞にダメージを与え、腫瘍が縮小することさえあるという。実際、前立腺がんと診断された田中雄一さん(68歳=仮名)はこの治療法により、全身の痛みが消えて腫瘍の大きさが縮小したばかりでなく、これまで続けてきたモルヒネやフェンタニルパッチといった医療用麻薬を使う回数も減ったという。
「むろん、投与後しばらくして再び痛みが出るケースもあります。その場合は再投与することもできます」
メタストロンは決して安い薬ではないが、保険が適用されるため、3割負担の人なら10万円の窓口負担となる。
非ステロイド性鎮痛薬やモルヒネが効かなくなった患者でも効果が期待できるこの治療法はなぜ、これまで普及しなかったのか?
「メタストロンは1カ月以上の生存可能な骨転移があるがん患者が対象ということもありますが、治療の多くは放射線核医学という一般の人には馴染みのないところで行われており、病院によっては該当する診療科がないケースがあるからです」
前立腺がん、乳がん、肺がんは患者数が多いだけでなく、骨転移しやすいがんであることが知られている。耐え難い痛みを抑えて、最後まで正気でいられる。「メタストロン治療」は知っておいて損のない治療法だ。