手術不能な膵がん患者 「5年生存率0%」からの治療最前線
藤井准教授らが試みているのは、卵巣がんや胃がんの手術で行われている治療法で、リザーバーというポート(差し入れ口)をお腹に埋め込み、それを通して抗がん剤を直接注入する。
用いる抗がん剤は「パクリタキセル」で、週1回投与。臨床研究段階だが、このパクリタキセルの直接投与を受けた33人の腹膜播種の患者のうち、4分の1に該当する8人のがんが縮小し、手術が可能になった。がんがあることを示す腫瘍マーカーが正常化に至った。
パクリタキセルの膵がんへの投与は保険適用ではないので、現在国内でこの治療を行っているのは、名古屋大と関西医科大などに限られている。
名古屋大では、手術不能の膵がんの場合、CTなどで腹膜播種が認められなくても、審査腹腔鏡という腹膜播種を見る検査機器で調べる。腹膜播種がなければ「抗がん剤や放射線で手術の可能性を見いだす治療」、腹膜播種があれば「ポートを埋め込みパクリタキセルを直接投与する治療」を行っている。これらによって、この5年で名古屋大の膵がんの平均余命が2倍に延びた。
膵がんであっても、諦めてはいけない。