お酒で赤くなる? 鍛えて強くなった人に食道がんのリスク
幸い、中村さんは早期がんで内視鏡による治療だけで済んだが、食道がんは周囲のリンパ節に転移しやすい。発見が遅れたら、命すら失ったかもしれない。
実際、日本では年間2万人が新たに食道がんと診断され、1.2万人が死亡する。50~60代に多く、がんと診断されてから5年後にどのくらいの人が生きているかを示す5年相対生存率は、胃がん6割強、大腸がん7割前後に対して、食道がんは男性3割、女性4割と悪性度が高いのだ。
食道がんは飲酒・喫煙がリスク要因といわれるが、中村さんはたばこを吸わない。お酒も昔はまったく飲めなかったが、鍛えて飲めるようになった。それでもビール1杯で顔が赤くなるのは変わらず、自宅で晩酌するほどの酒好きではない。
「実は中村さんのような人が食道がんになりやすいのです。もともと日本人でお酒の強い人は半分しかいません。5%はまったく飲めない下戸で、残りは努力して飲めるようになるものの、飲まない時期があると再び飲めなくなる、お酒の弱い人です」(鳥居院長)
お酒を飲むとアルコールが肝臓で代謝され、中間代謝産物として、アセトアルデヒドができる。その後、速やかに分解されて無害な酢酸になる。このシステムが正常に働かない人は、少量のお酒で顔が赤くなったり、悪酔いしたり、二日酔いがひどくなったりするのだ。