過敏性腸症候群との誤診多し 子供の「クローン病」って?
腹痛や下痢を子供が頻繁に訴えるようなら、それらが代表的な症状である炎症性腸疾患の一種「クローン病」の可能性がある。
クローン病患者の名良之繭子さん(38歳)は、高校時代から腹痛や下痢に襲われるようになった。19歳の時は腹痛を我慢し過ぎて倒れ、病院で「胃潰瘍と十二指腸潰瘍」と診断された。しかし、入院して治療を受けてもよくならない。
その後、何軒もの病院で胃の内視鏡検査やピロリ菌検査を受けたが、クローン病は一度も疑われず、多くは過敏性腸症候群との診断だった。結局、クローン病の診断がついたのは14年後、33歳の時。食事を口に入れるだけで腹痛を起こすほどだったが、適切な治療を受けて今は症状が安定している。
クローン病は、日本で急増している難病だ。口から肛門まで続く腸管の一部あるいは複数部に慢性の炎症を起こす。10~20代で発症する人が特に多く、主な症状は腹痛、下痢、血便だ。
原因は分からず、良くなったり悪くなったりしながら炎症は持続する。罹病期間が長くなると、小腸と大腸に縦に走る縦走潰瘍、腸管の狭窄、腸と皮膚あるいは腸管同士の間に通り道ができる瘻孔、腸管の癒着が起こる。痔瘻や肛門周辺の潰瘍を合併することもある。最近、クローン病の新薬(生物学的製剤)が登場した。「これで寛解(炎症が落ち着き症状が出ない状態)を維持できる人が増える」と言うのは、東邦大学医療センター佐倉病院消化器内科・鈴木康夫教授だ。