99歳まで生きたトミちゃんに学ぶ幸せな最期へできること
「陽子ちゃん! お母ちゃんは陽子ちゃんが泣いているのはイヤよ!」
■薬をやめ介助を最小限に
母親としての記憶がよみがえったのは一瞬だけだったが、この日を境に陽子さんは変わった。
それまでかかっていた医師から出された薬でトミちゃんが錯乱したのを目の当たりにして、思い切って「在宅介護」に精通する医師に代えた。丸尾さんや「つどい場さくらちゃん」のメンバー、医師、訪問看護師らのサポートで、トミちゃんは正気になり元気になった。負担そうに見えた週4のデイサービスもやめた。途端に元気になった。食事介助を最小限にした。すると手づかみで口から食べられるようになった。手づかみなら誤嚥をしない。
「要介護5のトミちゃんとあちこち旅行もしました。亡くなる2カ月前は沖縄旅行。1週間前のクリスマスは中華とビール。正月はおせちとおとそ。3日はすき焼きを食べ、デザートにアイスクリーム。そしてその夜、みんなに見守られる中、トミちゃんは旅立ちました」(丸尾さん)
記者が「つどい場さくらちゃん」に顔を出すようになって5年になる。丸尾さんたちが毎年開く「かいご学会」にも、同じ年数通っている。丸尾さんたちと触れ合い毎回感じるのは、「認知症=悲惨なもの」というイメージが先行し過ぎているということだ。