桜の下で幸せそうに喜ぶ患者さんを見て思わされたこと
それから2日後、Aさんは亡くなりました。私は彼女の2人の子供に「お母さんの分まで、元気に生きるんだよ」と声をかけました。まだ小学生だった2人は、泣きながら「うん」と頭を縦に振りました。子供たちは桜の枝を持って、亡くなったお母さんと一緒に寝台車に乗り込みました。私はその日が勤務の看護師たちと一緒に礼をして見送りました。
今はもうあの桜の木はなくなり、広い駐車場に変わっています。私の手元には、シートに座った患者さんと一緒に撮った写真だけが残っています。現在の病院では、あの頃のような「時間」や「余暇」を持てるとはとても思えません。
最近は、患者と医師・看護師の人間関係が薄いと言われます。あれから医療はずっと進歩しました。しかし、患者と医師の人間関係は、告知や同意書の署名などで、かえって薄くなっている。そして、お互いに心のゆとりがなくなっているようにも思います。多くの医師も看護師もいずれ患者になるのに、信頼関係の構築はなかなか難しい時代になっている。そう感じさせられるのです。
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