目<上>トラブルは血流不足から 仕事場でもできる2つの運動

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 目の健康を保つためには、他の部位の器官と同じように「目も全身の一部」という考え方も大切になる。それは目のトラブルに、全身の問題である「血流不足」が大きく関わっているからだ。

「ほんべクリニック眼科・統合医療科」(愛知県名古屋市)の本部千博院長が言う。

「人間の体に約60兆個あるとされる各細胞では、必要なエネルギーを生み出したり、タンパク質を合成したりといった活動が行われ、新陳代謝を繰り返しています。その働きに必要な栄養補給や老廃物の排出を担っているのが血液です。特に目への血流は、細かい毛細血管によって行われているので、もともと血流が行き渡りにくい傾向にあります。ですから、たとえばパソコン画面を長時間見続けたりして筋肉の柔軟性が失われたり、ちょっとしたことですぐに目は血流不足に陥ります。すると目にさまざまなトラブルが起こるのです」

 目のピントを合わせるときに重要な働きをする「毛様体」という部分がある。毛様体は、レンズの役割をする水晶体の周りについていて、毛様体筋とチン氏帯という微細な筋肉が伸び縮みすることで水晶体の厚さが変わり、近くや遠くにピントが合う仕組みだ。

 しかし、近くを凝視するパソコン作業などを長時間続けると、毛様体筋が緊張しっぱなしになる。すると毛様体の血流が低下して機能が悪くなり、結果、ピントが合わせづらくなり、近視や遠視を促進させてしまうという。

 さらに毛様体の血流が悪くなると、血管が通っていない角膜や水晶体にも影響する。それは毛様体が分泌する「房水」という液体が、血液に代わって角膜や水晶体に酸素や栄養を届けたり、老廃物の排出を行っているからだ。房水の循環が悪いと、水晶体が濁りやすくなり、白内障になりやすくなる。また、眼圧を一定に保つことができなくなり、緑内障の発症の要因にもなる。

 ちなみに日本人に多い、眼圧が正常なのに視野が欠けてくる「正常眼圧緑内障」も、血液循環の悪さが原因のひとつではないかといわれている。

「視神経に栄養を送り込む毛細血管の流れが悪いため、十分な栄養が届かず、眼圧は正常なのに視神経が圧力に耐えられず、視野の障害が起こるのではないかと考えられているのです。その証拠に正常眼圧緑内障の患者さんは、体温が低く、平熱が35度台の人が珍しくありません。体が冷えているということは血流が悪いということなので、正常眼圧緑内障も起こしやすいと考えられます」

 毛様体筋だけでなく、眼球の大きな筋肉も目の血流と大きく関わっている。眼球の上下、左右、斜め上下と、6本の外眼筋がある。この筋肉によって眼球を上下左右に動かしたり、グルグルと回転させることができる。ところがパソコンやスマホなど狭い範囲を長時間凝視していると、外眼筋の動きが悪くなり、目の血流も悪くなるのだ。

 パソコン操作のときに起こりやすい首を前に突き出した「前傾姿勢」も悪い。頚椎には脊髄という神経の束や血管が通っていて、目や脳に血液を送る血管もつながっている。悪い姿勢で頚椎が歪んで神経や血管が圧迫されると、目や脳への血流が減り、視力低下や目の病気を招きやすくなるという。

 パソコン作業時は1時間に1回は席を立ち、ストレッチなどをして血流を促すのがいい。本部院長が勧める全身の血液循環をよくする2つの運動がある。やり方はこうだ。

■手振り運動

①足を腰幅に開いて立ち、左右のつま先を平行にして、膝を軽く曲げる。肩の力を抜いて両腕を前へ出して、ヘソの高さくらいまで上げる。

②前に出した腕を、重力に任せてぶらんと後ろに振る。次に、①と同じ要領で腕を前に戻す。

 ①②の腕を振る動きを1分間に50回のペースで行うのがベスト。最初は1日10分を目標に行い、慣れてきたら30分ほど行うのが理想的だ。

■スロースクワット

 足を肩幅程度に開いて立ち両手を頭の後ろで組む。5カウントでゆっくりと膝を曲げ90度くらいまで曲げたら5カウントでゆっくりと戻す。これを一度に5回繰り返す。

「これまで運動をまったくしていない人や、体力に自信のない人は『手振り運動』から始めてください。体を動かすのに慣れてきたら『スロースクワット』にレベルアップするといいでしょう」

 次回は、目の血流をダイレクトに良くする4つのメソッド(方法)を紹介してもらう。

【連載】病気を近づけない体のメンテナンス

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