ヨーグルトで無理なく手軽にできる高尿酸血症・痛風対策
コロナ禍の自粛生活で高尿酸血症・痛風の患者が増加
コロナ禍でのリモートワークやステイホームにより、高尿酸血症・痛風患者が3割以上も増加傾向にあることが、一般社団法人日本生活習慣病予防協会が実施した医師への緊急アンケートで明らかになった。放っておくと痛風を繰り返すばかりか腎不全を引き起こし、透析治療が必要となるケースもあるという。どう対処すればいいのだろうか。
■尿酸値が高いまま放置すると痛風ばかりか腎不全を引き起こし、透析が必要になるリスクも!
日本生活習慣病予防協会が実施した緊急アンケートは、実際に痛風・高尿酸血症の診療を行った医師338人を対象に行ったもの。調査では、巣ごもり生活で「受診控え」があったと思われる4月〜7月の期間で高尿酸血症・痛風の増加傾向(33.4%)が見られたことが明らかになっている。また、コロナ禍の収束が見えない現状では、高尿酸血症や痛風患者はさらに増加する可能性があることを95%の医師が予想した。
「長期の自粛生活によって体重が増えている方が多く、尿酸値が上がりやすい状況になっています。肥満の人や内臓脂肪の多い人は血糖値を下げるホルモンであるインスリンの利きが悪くなるため、インスリンの分泌が多くなります。このインスリンが尿酸を排泄しにくくする働きがあるため、尿酸値が上がりやすくなるのです」と話すのは、両国東口クリニック(東京都墨田区)の理事長でもある大山博司医師。
自粛生活での飲酒増加や、不規則な食生活も尿酸値上昇の原因になりやすいそうだ。
尿酸の生成・排泄のバランスが乱れると高尿酸血症に
尿酸値が高めの人は、まずは食事でプリン体の摂取を控えることが対策の第一歩だと言われている。だが、そもそも尿酸やプリン体とはどういうものなのか。なぜ、プリン体が尿酸値を上昇させてしまうのだろうか。
「プリン体(核酸)は、生物の細胞の中にある遺伝子をつくっている成分で、細胞の活動のエネルギー源にもなっている成分です。私たちは日頃の食事を通してプリン体を摂取していますが、実は、プリン体の7〜8割は体内で生成されているのです。プリン体は体内で細胞の代謝や増殖、エネルギー源として利用され、最終的に尿酸になります。尿酸は一定量を体の中に保ち、余分なものは尿や便に含まれる形で体外に排泄されることで、体内の尿酸は理想的なバランスで保たれるようになっているのです」(大山医師)
尿酸がつくられる量と排泄される量のバランスが一定に保たれていればいいのだが、排泄されにくくなったり、作り過ぎたり、あるいはその両方が重なったりすると尿酸値が上昇してしまう。血液中の尿酸値が7.0mg/dlを超えると高尿酸血症と呼ばれ、関節の辺りで尿酸が結晶化しやすくなり、痛風発作が起こりやすくなるわけだ。
お酒をたくさん飲む人、肉や魚をたくさん食べる人、激しい運動を日常的にする人などは尿酸値が上昇しやすいといわれている。ちなみに、女性ホルモンには尿酸を排泄する働きがあるため、男性よりも尿酸値が上がりにくいが、閉経後にはホルモンが利かなくなり尿酸値が上がってしまうので注意が必要とのこと。
「恐ろしいことに尿酸値が高いまま放っておくと、痛風だけでなくさまざまな合併症を引き起こすリスクが高まります。痛風の人は尿管結石を起こす確率が5〜10倍も高いと言われています。また結晶が腎臓にたまることで腎不全を引き起こし、最終的には透析治療が必要になるケースもあるのです」(大山医師)
尿酸値が高いと血管内で炎症を起こしやすくなるのも問題だ。炎症によって動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞のリスクにつながるとのこと。
コロナ禍の在宅生活では食生活の見直しから始めよう
では、尿酸値の上昇を抑えるには、どんな対策をとればいいのだろうか。
「『食べ過ぎない、飲み過ぎない』が一番の対策です。プリン体の過剰摂取が尿酸値上昇の理由のひとつなので、レバーや魚介類、肉類など、プリン体の多い食材をなるべく取らないようにした方がいいのです。食べ過ぎを控えて『腹八分目』を心がければ、自然にプリン体の摂取は抑えられます」
日本生活習慣病予防協会の調査では、食生活の対策として尿酸値を下げるエビデンス(※)のある乳製品、中でもヨーグルトを推奨する医師が最も多かった(乳製品を推奨する医師の91%)。この結果について、大山医師はこう説明する。
「ヨーグルト等の乳製品はプリン体が非常に少なく、しかも、乳タンパクに含まれるカゼインには尿酸を排泄しやすくし、尿酸値を下げる働きがあるといわれています。中でもヨーグルトには、腸管内で尿酸の元になるプリン体の吸収を抑える働きが報告されている乳酸菌PA-3株を含むものもある。このヨーグルトなら、尿酸を排泄しやすくする乳タンパクの特徴と合わさって、尿酸値の上昇を抑える働きが期待できます」(大山医師)
終わりの見えないコロナ禍ではあるが、手軽に出来る対策として、尿酸値が高めの方は、さっそく試してみてはどうだろう。
※N Engl JMed. 2004 Mar 11 ; 350(11):1093-103