著者のコラム一覧
下山祐人あけぼの診療所院長

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

他人を家に入れたくない独居老人が在宅に結びついたのは…

公開日: 更新日:

 その方は都内の繁華街の一角に立つ一軒家で長年ひとり暮らしをしていらっしゃる女性です。ある事情で、旦那さんとお子さんとはずっと別居暮らし。気が付けば高齢期を迎え、次第に歩行がままならず、移動も不自由になっていました。

 地域包括支援センターの人が時折自宅を訪問して、生活の様子を伺いながら、「訪問診療は必要ですか?」とか「ヘルパーさんを入れましょうか?」などと声を掛けるのですが、女性はどうしても他人を信用できない、自宅には入れたくないの一点張り。頑として介護保険申請もせず、ちょっとした買い物や用事は昔馴染みのご近所の方にお金を払いお願いする、という生活を送っていました。

 そんな夏のある日のことです。自宅のクーラーが故障し、女性は熱中症の脱水症状で家で倒れ、動けない事態に。異変を感じた近所の人から連絡を受けた地域包括支援センターの人が駆けつけ、救急車を呼びました。しかし、本人は搬送拒否。せっかく呼んだ救急隊も帰ってもらうことになりました。

 その時はクーラーを修理し自宅で体調が回復するのを待ったのですが、それによって私たち在宅医療チームが介入するタイミングが訪れました。というのも、女性は病院の受診を拒否。しかし高齢で熱中症ですから放っておくわけにはいかない。そこで自宅にセンターの方が伺うことになり、私たちもそれに同行したのです。

 ただしこの時点では具体的な診療をするわけではありません。センターの方と一緒に密に出入りしながら、まずは私たちの存在に慣れてもらう。関係性ができた時点で、改めて介護保険申請を勧め、最終的には介護保険に入ってもらい、ヘルパーさんと交代しながら生活を支えていくようになりました。

【連載】最期は自宅で迎えたい 知っておきたいこと

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    男性キャディーが人気女子プロ3人と壮絶不倫!文春砲炸裂で関係者は「さらなる写真流出」に戦々恐々

  2. 2

    協会肝いりゲームアプリ頓挫の“張本人”は小林浩美会長…計画性ゼロの見切り発車で現場大混乱

  3. 3

    巨人・田中将大 戻らぬ球威に焦りと不安…他球団スコアラー、評論家は厳しい指摘

  4. 4

    SixTONES新冠番組を潰しにかかるTBS日曜劇場の本気度 道枝駿佑、松本潤、目黒蓮が強力な"裏被り”連発

  5. 5

    長渕剛「理不尽と戦ってほしい」鹿児島の母校卒業生にエールも…元女優から新たな告発

  1. 6

    侍J井端監督が正捕手に据えたい大本命は…3月強化試合への招集は「打倒甲斐」のメッセージ

  2. 7

    「胎動」と「混迷」が交錯するシンドイ2年間

  3. 8

    吉幾三(5)「お前のせいで俺と新沼謙治の仕事が減った」

  4. 9

    長山藍子のおかげでわかった両眼のがんを極秘手術

  5. 10

    ニセコで横行する「海賊スキースクール」…中国系インストラクターやりたい放題で認定校とはイタチごっこ