家族をちゃんと家で看取れるか 心配な時はどうすればいい?
こんなケースがありました。60代前半の男性で肺がん末期。在宅医療に興味があるものの、当初、奥さまが在宅医療に非常に不安を抱えていたので、私たちは何度も説明を行いました。
具体的には、訪問の頻度(患者さんが歩いてトイレまで行けたら週1回、ベッド生活中心だと週2回といったふうに)、在宅医療よりも病院の方がよいとなればすぐに再入院のお手伝いができる体制であること、自宅で家族が常にそばにいる環境が患者さん本人にとってみれば一番安心であること……などです。
すると、患者さん、奥さま双方が「一度家に戻ってみよう」となり、実際に自宅で過ごし始めると、息子さんや娘さんが頻繁に訪れて賑やかな日々。このまま自宅で過ごしたいとなって、そのためにどうすればいいのだろうかという思考にご家族の考えが変わっていきました。
本格的に在宅医療に切り替えた後も、患者さんやご家族の状況に合わせて治療のやり方をそのつど柔軟に変えていきました。
奥さまが薬局に薬をもらいに行くのが大変になったなら訪問薬局を導入したり、飲み薬がつらかったら貼り薬に替えてみたり。途中、奥さまが「自宅で本当に看取りをできるのかしら」と心の内を漏らされた時は、今後の経過について、どういう状態になっていくかなどをiPadでイラストなどを見せながら説明しました。
こうしてご家族の不安や不便を取り除きながら、約1カ月後に最期の時を迎えました。
在宅医療は患者さんの経過に合わせて一緒に寄り添う医療です。自宅に帰りたいという気持ちがあるなら、帰りましょう。不安があっても大丈夫。プロのチームが支えますから。