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松生恒夫医学博士

昭和30(1955)年、東京都出身。松生クリニック院長、医学博士。東京慈恵会医科大学卒。日本消化器内視鏡学会専門医・指導医。地中海式食生活、漢方療法、音楽療法などを診療に取り入れ、治療効果を上げている。近刊「ビートルズの食卓」(グスコー出版)のほか「『腸寿』で老いを防ぐ」(平凡社)、「寿命をのばしたかったら『便秘』を改善しなさい!」(海竜社)など著書多数。

78歳にしてなおポールがパワーに満ち溢れているのはなぜ?

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 ポール・マッカートニーは1942年6月18日生まれですから、もうすぐ満79歳になります。

 2020年、WHO(世界保健機構)が発表したデータによればイギリス男性の平均寿命は79・7歳とのことですから、すでにポールはほぼ平均寿命に到達したことになります。伝記本などポールに関する資料を読むと、ポールはこれまで1回だけ大病を経験したことがわかります。

 フィリップ・ノーマン著「ポール・マッカートニー ザ・ライフ」(KADOKAWA刊)によれば、2007年11月ごろ、ロンドンのハーレー・ストリートで心臓専門医の診察を受けます。当時、ポールはさまざまなストレスを抱えていたようです。そこで、血流が一部滞っていることを指摘されます。

 ポールはそのことを家族以外の誰にも知らせずに冠動脈血管形成手術を受けます。心身の疲労が重なり、いわゆる狭心症を起こしていたと推測されます。

 素早く治療を開始するという選択は、ポールらしさを示しているように私には思われます。その後、心臓に関する不調については、その本にも記されていませんし、メディア報道もありませんから、完治したと考えられます。

 ポールはこれまで数回にわたって日本公演を行っていますが、2015年の東京ドーム公演を私も観賞しました。パワフルに歌い、演奏するポールの姿からは、心臓に問題を抱えている様子はまったく見られませんでした。

 3時間近く歌い、ギター、ベース、そしてピアノを演奏しましたが、その間、休憩を挟むことはありませんでした。さらに水分補強さえ行わず、とても70歳を越えているとは思えませんでした。ファンとしてはうれしいステージでしたが、医者の立場から考えるといささか心配になってしまうほどでした。

 一度、狭心症を罹患したわけですから、その健在ぶりの陰でしっかりと健康管理を行っていたのでしょう。その後、2015年に「エジプト・ステーション」、20年に「マッカートニーⅢ」をリリースし大ヒットさせるなど、気力、体力、創作欲に陰りは見えません。

 そうした健在ぶりの背景には「菜食主義」があることは間違いありません。「顔のついたものは食べない」というポールのスタイルについては、すでにこのコラムで述べていますが、肉類を取らない食生活でも、豆類、穀類、植物由来のタンパク質を取ることで、元気に、そしてパワフルに生きていけることをポールは証明していると言ってもいいでしょう。

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