歩き方で認知症かどうか分かるって本当? 世界で複数の研究あり
歩行速度の変化と認知機能には関連があることが分かっています。歩くという能力には、注意力、空間認識力、状況把握力などいくつもの認知機能を必要とし、歩行速度が落ちたり、ふらつきがある場合、認知機能が低下している可能性があると考えられます。
複数の研究結果もあります。たとえば、米国オレゴン健康科学大学の研究グループは、健康な65歳以上の約200人を対象に歩行速度の調査をしています。平均9年間の歩行と認知機能の関係性を追跡したところ、認知症予備群である軽度認知障害(MCI)と診断された人は、健康なグループに比べ歩行速度が遅くなっていました。すべての認知症で起こるわけではありませんが、最近、「一緒に歩いている人に追いつけなくなった」「ふらつきやすい」「転びやすい」といった自覚症状や、家族にこうした歩行の異変が見られたら脳神経内科の受診をおすすめします。
とくに「レビー小体型認知症」「パーキンソン病認知症」、頭蓋骨内に脳脊髄液が過剰にたまって発症する「正常圧水頭症」の場合、歩行速度の低下をはじめ、すり足歩行や小刻み歩行、前かがみの歩行で、病気が発覚するケースも少なくありません。逆にいえば、ウオーキングは認知症予防に適していると考えられています。特にアルツハイマー型認知症は、脳の中の「海馬」が萎縮していきますが、その海馬は歩行運動により鍛えられることが分かっています。ウオーキングは有酸素運動ですから、血流を改善する効果があり、脳に十分な酸素が送り込まれて神経細胞が再生されたり、増加するのです。とくに記憶をつかさどる神経伝達物質のアセチルコリンが海馬の中で増えることが分かっています。