タレント小川恵理子さん乳がん闘病を語る「その場で涙が出ました…」

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身近にいる乳がん経験者の存在が力になった

 乳がんが確定したのは昨年5月。でも早期だったことと「あなたのがんの顔つきはおとなしいので、手術は急がなくてもいい」と言われて、2カ月ほど放置されました。先生の言葉を信じつつも、「ここにがんがある」と思うと不安でしたよ。手術の心構えもなかなかできませんでした。

 10年前、手術と抗がん剤と放射線という治療をした姉の過酷な経過を知っていただけに、「あれに私も挑むのか」と考えたり、「こんなに元気なのに、ホントにそんな治療するんかな」と信じられない気持ちでした。そう言っている間にも手術の日が迫ってくるんです。

 そもそも入院が初めてで、何を持って行けばいいのかもわからないので、あれもこれも詰め込んで「何カ月住むねん」というくらいの大荷物をゴロゴロ引きずって入院しました。本も20冊ぐらい持参。でも、終わってみれば荷物の9割8分は使いませんでした(笑)。

 手術は右胸の全摘+エキスパンダーの設置でした。エキスパンダーは後にシリコーンを入れるための隙間をつくる風船のようなものです。そこに1週間に50㏄ずつ生理食塩水を入れていって、左胸と同じ大きさになったらエキスパンダーとシリコーンを入れ替える手術をするのです。

 ただ、もし周辺への転移があれば、エキスパンダーは入れられません。乳房の摘出をしてみないと転移の有無がわからないので、麻酔から覚めて風船が入っているのを確認したとき、「転移がなかった。良かった」と思いました。

 術後は、点滴に入れている痛み止めのおかげで傷の痛みはだんだん治まっていったんですけれど、退院後は大変でした。もちろん痛み止めは飲みますけれども、体を起こしている状態じゃないと耐えられない痛み。真っすぐ横になれないつらさで、「これがずっと続くの?」と思って泣きましたわ(笑)。

 そんなとき力になったのは、身近にいる乳がん経験者でした。私の義理の妹(夫の弟の妻)が、7年前に私とまったく同じ治療をしていて痛みをわかってくれたことや、「時間がたつと楽になるし、シリコーン入れたらもっとずっと楽になるわよ」と言ってくれて、その言葉が希望の光になりました。

 シリコーンを入れる手術をしたのは最初の手術から10カ月後の今年5月でした。麻酔が覚めて病室の蛍光灯が見えたとき、「これで終わった」とホッとして、酸素マスクの中で溺れそうになるくらい涙が出ました。

 病気を通して思うことは、何かを乗り越える前はしんどいんだなってことです。なんやかんやいらんこと想像してしまいますけど、終わってみればね、もう忘れさせてもろうてます(笑)。

 私はずっと健康だったので、人の痛みや苦しみに鈍感だったと思うのです。やっと本当に共感できるようになってきました。何事も経験は財産やなと思います。

(聞き手=松永詠美子)

▽小川恵理子(おがわ・えりこ) 1969年、福井県出身。大学1年のときに松竹芸能の新人タレントオーディションを受けたことがきっかけで芸能活動をスタート。関西を中心に主にテレビやラジオのアシスタントパーソナリティーとして活躍。現在「笑福亭松喬の笑えば大吉」「hanashikaの時間。」(ともにラジオ大阪)、朝日放送ラジオ「宇野さんと小川さん。」にレギュラー出演。メディアプラットフォームのnote「乳がんゆるゆる日記」が好評で、トークショーもこなす。

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