長寿研究のいまを知る(10)糖尿病薬「メトホルミン」が抗老化薬として注目されるワケ
さて、治療現場で使われる一方で、長寿に役立つ薬として注目され研究されている薬は、mTOR阻害剤「ラパマイシン」以外にもある。古くから使われている2型糖尿病治療薬「メトホルミン」だ。
「メトホルミンは十分なインスリンを作れる膵臓を持ちながら、体がそれを感知できないタイプの2型糖尿病の患者に向けた薬です。この薬を飲むと血中を流れる糖を細胞が取り込んで活用できるようになります」
フランスで1959年に承認され、日本では1961年に発売された信頼性の高い薬で、国内外で多くのエビデンスが報告されている。その蓄積から米国糖尿病学会などで2型糖尿病の第1選択薬となっている。
この薬が健康寿命と寿命を延ばすことは、さまざまな研究機関が報告している。例えば、2017年には「メトホルミンは糖尿病コントロールとは無関係に、全死因死亡率と老化疾患を減少させる」との論文がオーストラリアの研究グループから報告されている。
米国立老化研究所はメトホルミンを投与したマウスではそうでないマウスに比べて、寿命が5%延びることを明らかにしている。メトホルミンを投与したマウスは摂取カロリーが減り、コレステロール値が下がり、腎臓病やがんが減少したという。