故・野村監督がベンチで握りしめていた「あの効能書き」
「でも、何です。それ?」
「使用書だよ、効能書き」
「使用書って何の?」
「精力剤だよ、アメリカの」
当時はアメリカからの精力剤がもてはやされていた時期だった。
「だったら球団に英語が読めるのがいるでしょう、通訳とか、渉外担当とか。訳してもらえばいいじゃないですか?」
もっともな話である。すると野村監督、ウーンと唸りながらこう答えた。
「頼んでもいいけどなぁ。(精力剤の話を)週刊誌に売られるとな」
話はそれで終わってしまったそうだが、野村監督は果たして精力剤を使ったのだろうか。それとも単なる座興、お馴染みのボヤキで周囲を煙に巻いただけだったのだろうか。
▽富岡二郎=スポーツジャーナリスト。1949年生まれ。東京都出身。雑誌記者を経て新聞社でスポーツ、特にプロ野球を担当。