「青森縄文王国」新潮社編
■青森出土の遺物に縄文人たちのぬくもりを感じる
青森県には1万年間も続いたという縄文時代の草創期から晩期まで三内丸山遺跡などの遺跡が点在し、縄文時代を代表する大きな文化が営まれていた。
本書は、青森の各遺跡から出土した土器や土偶、石器などを通じて縄文の魅力を再発見してもらおうと企画されたビジュアルブック。考古学的な解説はほどほどに、それぞれの土器や土偶を作った縄文人たちのぬくもりを感じながら、遺物に秘められた物語を読み解いていく。
例えば、幼児の手形、足形を押し付けて焼いた縄文時代後期の「手形付き土版」「足形付き土版」。写真で紹介されるのは六ケ所村の大石平遺跡から出土した完品だが、小牧野遺跡から出土したそれを手にすると、裏側に我が子の手足を取って粘土に押し付ける母親の指の痕跡が感じられるという。
日本最古の土器も青森県から出土している。1万5000年前に作られたとみられるこの土器には何の文様もなく「無文土器」と呼ばれる。確認できる最初の文様は、粘土の紐を張り付けた「隆起線文土器」(六ケ所村表舘(1)遺跡から出土)。凝った文様をまとってはいるが、煮炊きの跡が残っており、1万年前の人々に湧き上がった「身近な道具を装飾する」という「芸術という営みの萌芽」が垣間見える。