「パレートの誤算」柚月裕子著
瀬戸内海に面した津川市の市役所臨時職員・聡美は、生活保護に関する業務を行う社会福祉課で働く。生活保護費の支払日、午後から受給者の住宅訪問に出かけたベテラン職員の山川が、時間になっても戻らない。翌日、アパート火災の現場から見つかった遺体が山川と判明する。職場に聞き込みに来た刑事によると、山川の死は焼死ではなく、殺人によるものだという。
聡美は、山川が自宅に高価な時計のコレクションを持っていたと刑事から聞き、耳を疑う。山川は仕事に誠実に向き合う尊敬できる人柄だったからだ。山川が担当していた金田が火事の後、連絡がつかないと刑事に知らされた聡美は、胸騒ぎがする。金田は聡美の兄の友人だった。生活保護の現場をリアルに描く社会派ミステリー。
(祥伝社 730円+税)