がん治療で注目の免疫細胞と心不全との“意外な関係”
問題は、この病気の予後が、他の慢性疾患と比べて著しく低いことだ。
「日本では毎年130万人近くが亡くなります。そのうち、がんで亡くなる人は約37万人。心臓の病気で亡くなる人はそれに次いで20万人です。ただ、がんは肺がん、胃がん、乳がん、大腸がんなどの臓器がんをすべて合わせた数字なので、心臓は単一の臓器では最も死亡率が高い臓器といえます。そのうち7万人が心不全で亡くなります。がんの中で一番死亡数が多い肺がんが約7万人ですから、心不全は肺がんと並んで最も多い死因なのです」
しかも、心不全の死亡率は想像以上に高い。
国立がん研究センターが発表したすべてのがんの10年生存率は58%余り。一方、重篤な心不全(心不全の重症度を4つに分けたNYHA分類でⅣ度)では1年で50~60%が亡くなり、軽度(Ⅰ~Ⅱ度)でも1年で5~10%が亡くなる。なぜか?
「心臓が圧や容量による負荷、酸化ストレスやウイルス感染にさらされると、心筋の損傷治癒のために炎症を起こします。そして、自分の心筋などに対する自己免疫反応が起きて慢性炎症となります。心筋障害が進むと、結果的に血液を全身に送り出すポンプ役として心臓のなかでも最も負荷がかかる左心室が拡張する『左心室リモデリング』が進行し、やがて死に至るとの説があるのです」