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中川恵一東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

ピカ子さんが判定された「前立腺がん確率50%」の意味

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 剖検で見つかるというのは、前立腺がんは生命に影響を及ぼさず、それ以外の病気が命を奪ったということです。それくらい穏やかながんですから、治療のガイドラインにも、積極的に治療を行わず経過観察で済ます「待機療法」が明記されているほど。

 そうはいっても、ほかの臓器に転移して生死を脅かすような悪性のタイプもあります。そういった悪性度を見極める検査が生検で、この方が受ける精密検査も恐らくこれでしょう。

■治療の分岐点

 前立腺は尿管を取り囲むクルミ大の臓器で、無作為に10カ所から組織を採取。悪性度によって5種類に分け、1~5に分類し、最も多い細胞の悪性度と2番目に多い細胞の悪性度を足して判定します。

 その数値はグリソンスコアと呼ばれ、最低2~最高10。それが8~10なら悪性度が高いのですが、前述した通り前立腺がんは一般に高齢で発症します。ですから、悪性度が高くても、期待される余命の長さによっては待機療法が選ばれることがあるのです。

 治療にはメリットがありますが、手術には尿失禁や尿漏れ、放射線には直腸炎、ホルモン療法には筋力低下などがデメリット。たとえば、70代後半で悪性度の高い前立腺がんが見つかっても、平均寿命は81歳ですから期待余命はわずか。そういう状況だと、治療のメリットよりデメリットが上回るかもしれません。そう判断できれば、待機療法が選択されます。

 今回の男性は46歳。もし前立腺がんとすれば、若いケースです。若年性前立腺がんは、遺伝的にあるがんを受け継ぎやすい家族性腫瘍の可能性が。ほかのがんでもそうですが、家族性腫瘍は悪性度が高く、欧米では予防的前立腺全摘が行われることもあります。

【連載】Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

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