【まるごとロールキャベツ】"天然の胃薬”のうま味と甘味
抗がん作用のあるイソチオシアネートが豊富
春に収穫されるのが春キャベツ。冬キャベツに比べ、巻きがゆるやか、葉が軟らか、中の方まで色がついている、といった特徴を持つ。昭和に育った私にとってロールキャベツは洋食の王様。特別な日のごちそうだった。
それにしてもロールキャベツはどうしてキャベツであって、白菜やレタスではないのか。それはキャベツが独特のさわやかな甘味を持っているからだ。だから子供も大人もキャベツが大好き。収穫したての春キャベツの葉にはたっぷりの糖分が含まれている。中まで色がついているのは、それだけ光合成(太陽光を利用して糖をつくり出す究極の自然エネルギー反応)が盛んな証拠。そしてもうひとつの美点。キャベツはアブラナ科の植物。黄色い可憐な花を咲かせる。ケールやブロッコリーとも親戚だ。アブラナ科の植物はイソチオシアネートという抗がん作用を持つ成分を豊富に含む。なので旬の春キャベツを使った熱々のロールキャベツは、見てよし、食べてよし、健康にもよし、と三拍子そろった素晴らしいメニューなのだ。もちろんビールにも合う。
(福岡伸一)
▽福岡伸一(ふくおか・しんいち) 1956年東京生まれ。京大卒。米ハーバード大医学部博士研究員、京大助教授などを経て青学大教授・米ロックフェラー大客員教授。「動的平衡」「芸術と科学のあいだ」「フェルメール 光の王国」をはじめ著書多数。80万部を超えるベストセラーとなった「生物と無生物のあいだ」は、朝日新聞が識者に実施したアンケート「平成の30冊」にも選ばれた。
▽松田美智子(まつだ・みちこ) 女子美術大学非常勤講師、日本雑穀協会理事。ホルトハウス房子に師事。総菜からもてなし料理まで、和洋中のジャンルを超えて、幅広く提案する。自身でもテーブルウエア「自在道具」シリーズをプロデュース。著書に「季節の仕事」「調味料の効能と料理法」など。
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