アルツハイマー病が“脳の糖尿病”と言われるのはなぜなのか
たとえば予備群を含めた中期までの糖尿病患者には、インスリン量は足りているのに機能が十分果たせなくなる人が多い。これを「インスリン抵抗性」と呼ぶ。これが2型糖尿病や脂肪肝などだけでなく、AD発症の一因となる。
「その理由は、インスリンのシグナル伝達は脳内の神経前駆細胞増殖や神経生存を助ける働きがあり、慢性的な高インスリン下ではシグナルが鈍化するからです。インスリン抵抗性は高血圧を招き、動脈硬化の進行を速め脳血管障害になりやすい。結果、脳血管性認知症リスクを高めます。この病気はADと合併しやすいことが知られています」
インスリンは自身の仕事を終えると、インスリン分解酵素(IDE)により分解される。IDEはAD発症に関わるアミロイドβ(Aβ)の分解も担当しているため、慢性的な高インスリン下ではインスリン分解で手いっぱいとなってAβを分解する余裕がなくなり、AD発症リスクが高くなる。
■高血糖が全身に慢性炎症を作り出す
「血糖が高いことはそれ以上に問題です。血液を流れる糖分は多くの異なるタンパク質にくっついて終末糖化産物(AGE)という毒性の強い物質に変わり、さまざまなタンパク質の機能を妨げるからです」