80歳の男性患者は孫からの“宿題”で生きる元気を取り戻した
いつもPさんはたくさん話されます。この日も、調子が悪いと言いながらおしゃべりが続きました。
「普段は買い物に行くくらいで、外にはあまり出ません。テレビばっかり見ているけど、政治のことでは腹が立つし、またコマーシャルが嫌でね。最近のお笑いは品がないね。男が裸になって、頭叩いて笑ってる。客も一緒に笑っているけど、あれで芸人ですかね? (柳家)金語楼の時代の落語や漫才を見せてやりたいですよ」
「胃の検査? いいよ、やらなくていい。いつ死んでもいいんですよ。本当、絶対に嫌です。がんがあっても、進んで死んでも、先生のせいにはしないよ」
「先生は『生きていたらいいことある』って言うけど、ないよ、先生! いいことなんてない。娘に老人会の集まりに行けと言われるけど、いまさら行っても知り合いはいないし、ひとり暮らしでいいんですよ。世の中に役に立つわけでもないし、私が生きている意味なんてないんだ。けど、先生に助けてもらったし、こうして外来にまた来ますよ」
「楽しみは孫の成長くらいかな。一緒に住んでいないけどね。先生、小学生の頃の孫はかわいかったよ。でも、だんだん塾とかでいまや会えるのは年2、3回くらいかな。来た時は小遣い稼ぎ、金集めなんだから……もらったらすぐ帰ってしまう」