永田宏
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永田宏長浜バイオ大学コンピュータバイオサイエンス学科教授

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

【50代男性】4位の鹿児島は尿蛋白が全国トップで腎臓に不安

公開日: 更新日:

「青森、沖縄、秋田」の不健康王国の座は10年以上変わらない!?

 50代男性の不健康偏差値、トップ3県は青森県、沖縄県、秋田県。順位を含めて40代とまったく変わらない。不健康レーダーチャートの傾向も、大きな違いはない。青森県は空腹時血糖値でトップ(偏差値75.5)だし、沖縄県はBMIで圧勝(同99.3)しているといった具合だ。

 これら3県は、それぞれの"得意"分野をしっかりと守りつつ、不健康"優良"県としての不動の地位を確立している。しかもいまの50代は、10年後には、いまの40代と完全に入れ替わるのだから、これら3県は、この先も長きにわたって不健康王国であり続けるに違いない。

鹿児島県の中年男性は酒をそれほど飲んでいない

 同じことを書いても面白くないので、今回は4位から6位に注目してみよう。

 総合4位は鹿児島県だ。40代男性でも4位に入っており、不健康強豪県の一角を占めている。尿蛋白、血糖値、血圧の偏差値が高い。とくに尿蛋白は75.5で全国トップだ。全受診者の1.9%が2+以上となっており、腎臓病患者の増加が懸念される。しかしBMIは低めで、ほぼ全国平均並み。また鹿児島といえば薩摩焼酎の印象が強いが、γ‐GTPも全国平均よりやや高い程度だ。肝臓が丈夫なのだろうか。

 ところが鹿児島県の「アルコール健康障害対策推進計画」を見ると、意外な事実が見えてくる。成人1人当たりの酒類消費量では全国14位(2016年度)、アルコール摂取量が1日40グラムを超える人の割合は、50代男性で15.7%(全国平均17.4%)となっている。鹿児島県の中年男性は、世間で思われているほどには飲んでいないのである。

北と南に不健康"優等"県が集中する傾向が

 5位は和歌山県。40代では8位にランクインしており、不健康偏差値の上位県のひとつである。LDLコレステロールと血圧の偏差値が高いのが特徴だ。LDLコレステロールは全国2位にランクインしているし、血圧は全国3位となっている。和歌山県といえば梅干しが有名だ。梅干しには高血圧を抑える作用があると言われているが、はたしてどうなのだろう。ただBMIとγ‐GTPは全国平均並み、尿蛋白の偏差値もさほど高くない。

 6位には北海道がランクインした。BMIとLDLコレステロールの偏差値が高い。しかし空腹時血糖値、中性脂肪、尿蛋白は全国平均並みだ。LDLコレステロールの偏差値が高いのは、乳製品をよく食べるひとが多いからだろうか。いずれにしても美味しいものが豊富なうえに、冬場は運動不足になりがちな土地柄だ。メタボ系の偏差値が高めなのは、むしろ当然と言えるかもしれない。

 表を見ると、北と南に不健康"優等"県が集中する傾向があり、下位には大都市圏の都府県が連なっていることが分かる。また東海圏(愛知・岐阜・三重)の偏差値が押しなべて低い。大都市のほうが健康意識が高いから、地方には医師が少ないから、地方のほうが自動車所有率が高いから、などなどいくらでも仮説は思いつくが、すべてを説明できるものではない。複合的な理由でこうなった、と言うしかなかろう。

首都圏50代サラリーマンは他県より肥満多め

 不健康偏差値"劣等"県からは、神奈川県をピックアップしてみよう。東京に隣接していながら、湘南の海や丹沢山系を有し、ちょっと高級感が漂っている。そういえば箱根も神奈川県だ。

 レーダーチャートにあるように、不健康偏差値の各項目は押しなべて低め。ただしBMIが全国平均を少し上回っている(偏差値52.4)。ちなみに首都圏の50代男性のBMI不健康偏差値は、東京都52.9、埼玉県53.7、千葉県60.8、茨城県55.6となっている。つまり、首都圏の50代のサラリーマンは、他県よりも肥満が多め、ということになる。

 これもまた、理由はいくらでも思いつくが、確実なものはない。ただフィットネス産業的には、首都圏の50代男性は、まだまだ市場開拓の余地がありそうだ。

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