新型コロナワクチン接種に備えて知っておきたい「Q&A 10」
医療従事者に続き、高齢者の新型コロナワクチン接種がスタートした。一般向け接種についてはまだはっきりした見通しが立っていないが、その時に備えて知っておくべきポイントを医師に聞いた。
【Q】近所のクリニックに行けば、すぐに打ってもらえる?
【A】厚労省が接種スケジュールを管理しており、接種対象の16歳以上の希望者全員がすぐに接種できるわけではない。計画では4月から65歳以上の高齢者、その後に基礎疾患がある人などを優先しながら接種することになっている。
「接種場所は、原則として住民票を登録している自治体が指定する医療機関や公民館、体育館などです。単身赴任者や入院患者などは、事前手続きすれば例外的にほかの自治体での接種が認められます。接種に必要な『接種券(クーポン券)』は、『新型コロナワクチン接種のお知らせ』と共に事前に自治体から自宅に郵送されます。接種希望者は接種時期を確認の上、希望する接種日時と会場を電話やネットなどで予約しなければなりません」(北品川藤クリニックの石原藤樹院長)
【Q】○○社のワクチンを打ちたい……希望は通る?
【A】国際医療福祉大学熱海病院で新型コロナウイルスワクチン接種の指導医を務めた同院検査部の〆谷直人部長によれば、「日本では接種を受ける時期に供給されているワクチンを接種することになります。つまり、どの会社のワクチンがいいかといった希望は通りません」という。複数のワクチンが供給されている場合は、2回目は1回目に接種したワクチンと同じものを接種する。
どの会社のものが最も効果があるのか、気になるところだが……。
「ワクチンは有効性や安全性を慎重に審査した上で薬事承認されます。ですから、薬事承認されたワクチンは有効性や安全性が確認されており、いずれも一定以上の効果があると考えられます」(〆谷直人部長)
【Q】変異株に対しても効果はあるのか?
【A】「一般論として、変異株に対しても、ワクチンは効果があると考えられます。なぜならウイルスは絶えず変異を起こしていくもので、小さな変異でワクチンの効果がなくなるわけではないからです。さらに、ファイザー社のワクチンでは、変異株の新型コロナウイルスにも作用する抗体がつくられたという実験結果が発表されています」(〆谷直人部長)
承認申請されたワクチンは、いずれも変異株の情報も含めて、有効性、安全性を確認している。問題は、現段階ではコロナのワクチン接種が16歳以上を対象としていること。15歳以下の効果を見たデータがないからだ。
厚労省によると、3月末時点で確認されたコロナ感染者約47万人のうち、10代以下は約9%(約4万5000人)。ところが変異株感染者(673人)に限ると、10代以下が占める割合は23.3%(157人)に上る。専門家は、コロナの変異株が従来株と比べて感染力が強く、全世代で感染リスクが高いとみている。
アレルギーがある人は副反応が起きやすい?
【Q】副反応はどんな症状が出るのか?
【A】4月9日開催の「第55回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会」で公表された資料によると、2月17日~4月4日の推定接種者数109.6万人のうち「医療機関からの副反応疑いの報告」件数は1755件(男性258件、女性1495件、不明2件)。うち重篤は296件(男性41件、女性253件、不明2件)、死亡5件(男性2件、女性3件)だった。
「最も多かったのは『アナフィラキシー反応』で343件。以下、『発熱』(289件)、『倦怠感』(211件)、『頭痛』(195件)、『そう痒症』(174件)、『悪心』(149件)、『紅斑』(138件)、『発疹』(137件)、『蕁麻疹』(136件)となっています」(弘邦医院の林雅之院長)
【Q】アレルギーがある人は副反応が起きやすい?
【A】すべてのアレルギーが危険というわけではない。ワクチンや薬でアレルギーがあった人や、アナフィラキシーの既往のある人は、慎重接種の扱いになるのでこれらのアレルギーがあった人は、医師に事前に相談して接種するのが望ましい。
また、厚労省はファイザー社のワクチンの成分である「ポリエチレングリコール」(PEG)に対して重いアレルギー反応を起こしたことがある人には接種は推奨しないとしている。
「PEGはスキンケア用クリームなどの化粧品や大腸検査の下剤などに使われています。こうした物質でアレルギーを起こした経験のある人は、かかりつけの医師に相談してください。PEGと構造が似たポリソルベートに重いアレルギー反応を起こしたことがある人も、専門医に相談した方がいいとされています。ポリソルベートは乳化剤としていろいろな食品に入っているほか、ポリオやロタウイルスなどのワクチンにも含まれます」(石原藤樹院長)
【Q】副反応が出たらどうすればいい?
【A】ワクチンによる発熱は接種後1~2日以内に起こることが多く、必要な場合は解熱鎮痛剤を服用するなどして、様子を見ることになる。
「発熱以外のワクチン接種後に比較的起きやすい症状としては、頭痛、疲労、筋肉痛、関節痛、悪寒(寒け)などがあります。ワクチン接種を受けた後、2日以上発熱が続く場合や、症状が重い場合などは、医療機関などへの受診や相談を検討してください。体調の変化、異常があれば、接種を受けた医療機関や、あらかじめ伝えられた連絡先に相談し、指示を仰ぐようにしましょう」(林雅之院長)
左右のどちらの腕に打てばいい?
【Q】副反応で健康被害が出た時に補償は受けられる?
【A】「一般的に、ワクチン接種の副反応での健康被害は極めてまれ。しかし避けられないことから、予防接種法で救済制度が設けられています」(〆谷直人部長)
健康被害で医療機関での治療が必要になったり、障害が残ったりした場合、医療費や障害年金などの給付が受けられる。コロナワクチンにおいても同様だ。ただし、その健康被害がワクチン接種によるものだと厚労大臣が認定した場合に限る。申請が必要なので、まずは接種を受けた市町村に相談するといい。
【Q】左右のどちらの腕に打てばいい?
【A】「COVID-19ワクチンに関する提言(第2版)」には、「接種する腕は、接種部位の疼痛に備えて、利き手ではない側に接種することが望まれます。ファイザーの臨床試験のプロトコールでは、接種は利き手ではない腕に接種することになっていましたので、2回目の接種も1回目と同側が望ましいと考えられます。ただし、1回目の接種部位に著明な局所反応を認めた場合、2回目は反対側に接種することも可能と思われます」と記載されている。
「とはいえ、利き腕への接種が絶対にダメというわけではありません。左腕を下にして寝ることが多いなど、普段の生活スタイルに応じて決めればいいと思います」(林雅之院長)
【Q】基礎疾患がある場合、早期のワクチン接種のために診断書が必要?
【A】ワクチン接種は医療従事者から始まり、その後、高齢者、高齢者以外で基礎疾患がある人や高齢者施設などで従事している人、いずれにも該当しなかった人へと順番に進められていく。
「基礎疾患があっても、診断書などを持参する必要はありません。場合によっては、医師が問診で病気や治療の状況などを確認します」(〆谷直人部長)
【Q】家族が認知症の場合、接種意思はどのように確認すればいい?
【A】接種には、本人の接種意思の確認が必要だ。確認しにくい場合は、認知症の本人をよく知っている家族などが対応する。
「本人が接種を希望しており、しかし何らかの理由で自署が困難な場合は、家族が代わりにサインすることが可能です」(〆谷直人部長)