外科医がカテーテルや内視鏡を使う手術はどんどん進化している
たとえば「MICS(ミックス)」と呼ばれる小切開手術は、従来の開胸手術のように胸骨を大きく切らず、右胸の下を小さく切開した範囲の中で内視鏡を使って処置を行います。さらに最近は、弁と心室の壁をつないで僧帽弁を支えている腱索が断裂している患者さんに対し、内視鏡を穿刺して心臓の中に人工腱索を運んで処置を行う方法も登場しています。
また、外科治療=手術と、内科治療=カテーテル治療を同時に行うハイブリッド手術も進化しています。心臓血管外科と循環器内科がタッグを組み、冠動脈バイパス手術とTAVIや、大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術と外科手術をいっぺんに実施するケースが増えているのです。
ほかの診療科でも同じようなケースが出てきています。たとえば胃がんでは、近年は腹腔鏡を使ってがんを切除する消化器内科の内視鏡手術が主流です。その際、これまでは挿入した腹腔鏡で胃壁を破らないようにしながら切除していました。しかし、それではがんを取り残してしまうリスクがあります。
そこで、あえて胃の内側から腹腔鏡でがんのある箇所の胃壁を穿孔させる=穴を開けるくらい切り取り=、その後、外科医が穿孔した部分を内視鏡で確認し、胃の外側から縫い合わせて修復するという方法が行われています。トラブルと成功が紙一重だとすれば、腹腔鏡で内側からトラブルのレベルまで処置しておいて、それを外側から外科的処置で抑え込むという発想です。少しでも根治性を高めるために、内科と外科が協力して手術に当たるのです。