堀田秀吾
著者のコラム一覧
堀田秀吾明治大学教授、言語学者

1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。著書に「図解ストレス解消大全」(SBクリエイティブ)など。

ハグを日常的にする人は幸せホルモンレベルが高い クッションでもOK

公開日: 更新日:

 いまだ収束しない新型コロナウイルス、さらにはロシアのウクライナ侵攻──。不安を感じるニュースが多く、ひとりで過ごしていると、何とも言えない不安やモヤモヤを感じてしまうことが少なくありません。

 1人暮らしは自由気ままで気楽ですが、一方では夜、ひとりで過ごしていると、センチメンタルになる瞬間もあると思います。眠りにつこうとするときや、仕事から帰ってきて暗い部屋の電気をつけたとき、寂しさも相まって急に不安に襲われる。家族や恋人、パートナーがいる人であれば、不安やモヤモヤも多少薄まるかもしれませんが、1人暮らしともなれば、自分ひとりで抱え込んでしまいがち。上手に心を落ち着かせたいところです。

 南カリフォルニア大学のライトらの研究(2005年)では、「カップルの相手からの頻繁なハグでオキシトシンが増加する」ことが判明しています。“抱きしめる”行為には、幸せホルモンと呼ばれるオキシトシンを増加させる効果があり、目の前に相手がいなくても、同様の効果が得られる方法があるといいます。

 その方法とは、誰かと電話などで話しているときに、抱き枕などを抱きしめることです。

 国際電気通信基礎技術研究所(ATR)のスミオカらの研究(13年)によると、離れたところにいる見知らぬ相手と電話で話す際に、抱き枕のようなものをハグしながら話すと、ストレスホルモンであるコルチゾール値が低下し、幸せホルモンのオキシトシンが増加することが観察されています。

 クッションや大きなぬいぐるみでもいいので、ぎゅっとハグしてみてください。不安にかられたときは、何かを抱きしめてみる。それだけでオキシトシンが増加し、ストレスの軽減に役立つのです。抱きしめるという行為には、気持ちを変える効果があるんですね。

 実際、ハグの効果というのは侮れません。カーネギーメロン大学のコーヘンは、406人の健康な成人に、2週間にわたって毎日の活動の内容やハグの有無、人間関係のトラブルがあったかなどをインタビューし、そのうえで被験者を人為的に風邪のウイルスにさらし、病気への耐性がどれだけあるのかを調べました(14年)。

 結果は、人間関係のトラブルの有無については、罹患リスクと無関係だったものの、ハグをした人は罹患リスクが減少していました。さらには、「頻繁にハグ」をしていたオキシトシンレベルの高い被験者たちは、重度の症状には至らなかったという結果も明らかになったそうです。

 人は社会的動物。つねに心のどこかで他者との触れ合いを求めています。ぬいぐるみや抱き枕なら、抵抗なく触れられ、好きなだけ抱きしめていられます。もちろん、パートナーがいる方は、出かけるときなどの「行ってきます」の際に、軽くハグをすると幸せホルモンが増加します。

 不安なときは、何かをぎゅっと抱きしめる。きっとあなたの心もスッと落ち着くはずですよ。

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