認知症の親が自傷行為を繰り返す…対処法はあるのか?
とりわけ注意したいのが、陰部のかきむしりです。こだわりが性器に向くと、ベッドなどでじっとしていると気になっていじるようになります。一度キズができると気になり、さらに触ってキズが悪化するといった悪循環に陥りやすい。傷口から感染を起こすと、性器が腫れたり出血が止まらなくなる恐れがあります。陰部に手が届かないよう、ズボンの腰ひもはしっかりと固く結び、ほどきにくくしましょう。
それでもかきむしる行為が続くのであれば、つなぎのような介護寝間着を着用してもらうのもお勧めです。介護寝間着は介護現場において拘束に値するとされていますが、厚労省が高齢者ケアに携わる人に向けて作成した「身体拘束ゼロへの手引き」には、物理的な予防策を講じても効果が見られない場合、本人の体を守ったり安全を確保するためにやむを得ない場合には一時的に使用することが認められています。
自傷行為で困ったことがあればかかりつけ医に相談し、その人に合った対策を一緒に考えるといいでしょう。
▽杉山孝博(すぎやま・たかひろ)1973年東京大学医学部卒業後、東大医学部付属病院で内科研修。75年に川崎幸病院に内科医として勤務し、87年からは同院で副院長を務める。98年から川崎幸病院の外来部門を独立させた川崎幸クリニックが設立され、現在まで院長を務める。81年から公益社団法人「認知症の人と家族の会」に参加し、現在は神奈川県支部の代表を務める。