肺がん治療の今(1)末期であっても長期生存に希望が見えてきた
2024年6月から、早期肺がんの保険治療に陽子線が加わる(※)。治療の進歩が目覚ましい肺がん。その最前線はどうなっているのか?
「かつて肺がんは、手術ができなければ来年の桜は見られないと言われるほど、非常に治療成績が悪いがんでした」
こう言うのは、岐阜県にある中部国際医療センター肺がん治療センター長の樋田豊明医師(呼吸器内科部長)だ。しかし今、状況は大きく変わった。
「がんの標準治療には手術、薬物、放射線があります。肺がんの薬物治療では、従来の抗がん剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害剤の3種類があります。放射線治療では、効果の高い陽子線も適応がある。患者さんの肺がんに適したものを適切なタイミングで組み合わせることで、治療成績が向上してきたのです」(樋田医師)
従来の抗がん剤は、がん細胞のみならず正常細胞の分裂、増殖まで攻撃してしまう。ゆえに、副作用が強い。しかし分子標的薬は、正常細胞には攻撃が向かず、がん細胞の発生や増殖に関わる特定の分子だけを狙い撃ちする。副作用が少なく、従来型よりがん細胞の活動を抑える時間が数倍長く、長期間コントロールできる。