「立って」仕事をすれば健康で長生きできる(1)座りすぎは血流を悪化させ病気を招く
近年、「座りすぎ」が体に悪い影響を与えることが明らかになってきた。かねて座りすぎ問題を研究し、警鐘を鳴らし続ける岡浩一朗教授(早稲田大学スポーツ科学学術院)は、「座りすぎによって、いろいろな問題が生じます」と指摘する。
「よく『いい姿勢で座ってください』と言うと、深めに腰掛けて背筋を伸ばす人が多いんです。その姿勢の何が“いい”のかを尋ねると、『見た目がいい』とか『骨盤が立つ』といった答えが返ってくるんですね。でも、その姿勢では、太ももの裏がギュッと押され、ふくらはぎは動かず、鼠径部は折れ曲がって、すごく詰まった感じがすると思います。下肢にある血液を心臓に戻さなければいけないという血流の観点に立つと、何もいいことはありませんよね。5分動かないだけで、血流は悪くなります。30分後にはさらに非常に悪くなる。でも、痛くもかゆくもないじゃないですか。だから気づかないんですよ。こうした意識のなさが、座りすぎ問題の背景にあるんです」
血流が悪化すれば体にとって良くないのは明らかだ。下肢に70%ある筋肉がまったく使われない状態が長時間続くと、運動器はもちろんのこと、代謝機能にも問題が生じる。