熟睡のためのエアコン使用法「3つの誤り」を正す この夏も災害級の暑さに
■湿度20%低下で体感温度は4度下がる
前述した通り、寝室の設定温度は28度。では、室温28度でエアコンを稼働させて朝までつけっぱなしなら、それでいいのか。実はそこに意外な落とし穴がある。
「エアコンを室温28度にして運転すれば、室温は確かに28度でキープされます。しかし、そのままでは湿度が下がり過ぎるため、体感温度としては“適温”から“寒い”に変わる可能性があるのです。低湿度の悪影響に気づいていない方は、意外と少なくありません。低湿度対策が盲点になっているのです」
ダイキン工業は、湿度の違いで被験者の体表面温度がどう変化するかをサーモグラフィーで可視化する検証試験も行っている。室温は28度。被験者12人に湿度85%の環境で皮膚温度の上昇を確認してから、室温は28度のまま湿度を60%に下げたところ、12人中10人は手や顔の表面温度が顕著に低下していた。湿度が20%変わると、体感温度は約4度変わるという。
蒸し暑いこの時季、必ずしも冷房で温度を下げるのではなく、除湿で室内をひんやりさせることはよくある。ダイキンが数値で示したようなことは、何となくあちこちで体感しているはずだ。では、低湿度のどこが問題というのか。
「エアコンの冷房は、室内の水分を外に放出する気化熱で冷却する仕組みで、同時に除湿もできます。その性質から、連続して使用すれば室内の水分量は減り続け、乾燥が進むのです。室温が同じなのに“寝冷え”を感じるのはそのため。エアコンをつけっぱなし運転で使用する際は、速乾素材の長袖や長ズボンの方が“寝冷え”を防いで朝まで熟睡できます」
■冷気の通り道に濡れタオルなどで加湿を
なるほど、冒頭の太田氏が知らぬ間にエアコンのスイッチを切ってしまったのは、同じ室温による“寝冷え”を感じた末のことかもしれない。それで室温が少しずつ反転して上昇し、“棺桶級の熱さ”につながったとすれば合点がいく。適度な除湿はよくても、過度な除湿はよくないわけだ。これがエアコン使用における誤りの3つ目だという。
「エアコンをつけっぱなしのまま就寝して朝起きたら、のどがイガイガしていたという症状は乾燥が原因です。エアコンの冷気の通り道に濡れたタオルをつるしたりして適度に水分を補う工夫は必要でしょう。それはのどの乾燥対策にもなりますし、適度な湿度をキープすることで“寝冷え対策”にもなります。一石二鳥です」
吉竹氏の説明に耳が痛いという人はかなりいるのではないか。かくいう記者もその一人だ。低湿度による“寝冷え”はシーズン中に何度となく経験している。それも毎年だ。温度設定はクールビズ推奨より1度高い29度だから、「“寝冷え”を感じると、直風がよくなかったか」くらいにしか思っていなかったが、深く納得。低湿度対策として濡れたフェースタオルやバスタオルを寝室につるし始めたところ、のどの状態もよく、“寝冷え”も感じなくなった気がする。
こうしたエアコン使用に伴う工夫に加え、取り入れたいのは入浴だ。シャワーではなく、ベッドに入る1時間半くらい前までに全身浴をしておくのが効果的という。
「ヒトの体は、体温が下がるときに眠くなるようにできています。そのスムーズな入眠態勢に導くには、シャワーで済ませるのではなく、全身浴でしっかりと体を温める方が効果的。そのタイミングがベッドに入る1時間半前までなのです」
2年連続となる“災害級の猛暑”は、まだ始まったばかり。厳しい夏を乗り越えるには、エアコンなどを賢く使って、疲れを持ち越さないことが肝心だ。きょうから実践しよう。