肺がん4期の大林宣彦さん 余命3カ月を“未定”にした治療は
従来の抗がん剤がじゅうたん爆撃のように攻撃するイメージなら、これらはピンポイント攻撃のイメージ。“攻撃対象”が絞られることで、これらの薬は比較的副作用が軽い。「撮影と並行しながら治療」できたのはそのためでしょう。
しかも、それぞれの薬に最適な患者の特徴が分かってきたことで、高い治療効果を挙げるケースがあるのです。大林さんは、そこにうまく合致した形でしょう。
では、どんな人に薬がよく効くのか。そこが今回のポイントで、遺伝子検査がカギを握っています。たとえば、イレッサの効き目が高いのは、EGFR遺伝子が変異している人。薬の手引などには「EGFR遺伝子変異陽性」と書かれます。その変異があり、手術不能か再発した非小細胞肺がんの方が対象です。
同じようにほかの9種類についても、薬にマッチする遺伝子の特徴が分かっています。逆にいえば、遺伝子検査の結果から薬にマッチしないと判明したら、これらの薬は使いません。薬の適応を調べる遺伝子検査はとても重要です。
ちなみにイレッサは、1年~1年半で薬の耐性ができ、再びがんが増殖しやすくなることも分かってきました。新しいタイプの薬にも課題が見つかり、適宜、薬を替えながら治療します。
全体として副作用が軽いと書きましたが、間質性肺炎など重篤な副作用もあります。元気に長生きする可能性を少しでも高めるには、医師と相談しながら治療の選択肢をしっかり見極めて、慎重に薬を使うことが大切です。