周囲の対応で変わる 都会と田舎で認知症の進行が違うワケ
一方、田舎はまったく違う。どこに住んでいるか、職業は何か、家族構成はどうかなど、まわりの人間は知っている。さらに都会とは違い住民構成における高齢者の比率が高い。だから、まわりは「ちょっとはボケているけど」と寛容な態度で接する。安心して外を歩かせることができるし、道に迷っても誰かが気づいて連れ戻してくれる。トラブルが生じれば助けてくれる。
さらに認知症であっても多くの高齢者が長年培ったスキルを生かして農業、漁業の担い手として働いているし、商店を営んでいれば店番なども立派にこなす。労働力として機能しているのだ。
つまり、田舎の高齢者は濃厚な近隣との人付き合い、周辺とのコミュニケーションによって、日々新たな情報や刺激を得ることができるわけだ。こうした暮らしが脳の萎縮を遅らせるのだろう。つまり残存能力を駆使してQOL(生活の質)を急激に下げずに暮らすことができるのだ。
いまはデイサービスの普及によって、都会でもそれなりにコミュニケーションの機会は増えたが、認知症の高齢者の症状やQOLは、住んでいる地域の環境、住民の意識、子どもたちの対応によって大きく左右されることをよく認識してほしい。