専門誌に論文 認知症が「ステロイド」で予防できる可能性も
認知症はいったん症状が進んでしまえば、その進行を遅らせるような治療しかありません。もちろん予防できればそれに越したことはないのですが、決め手となるような予防法や予防薬もないのが現実です。何か有望な方法はないのでしょうか?
認知症は脳の神経細胞の炎症が原因のひとつである、という仮説があり、それが本当であるとすると、炎症を抑えるような治療で認知症が予防できるかも知れません。
今年の認知症の専門誌に、「治療薬のステロイドと認知症」との関係を調べた、興味深い論文が掲載されました。ステロイドは炎症を抑える作用を持つ薬で、飲み薬や注射以外に吸入薬や点鼻などでも使用されています。
ドイツにおいて大規模な医療保険のデータを解析したところ、ステロイドを継続的に使用している人は、そうでない人より、20%近く認知症が少なくなっていました。ステロイドの種類では、もっとも予防効果があったのはぜんそくなどの「吸入ステロイド」で、35%も認知症になる人が少なく、続いて「点鼻のステロイド」も高い予防効果が認められました。これはぜんそくなど他の病気の治療のために使われていたので、その効果はまだ確実とは言えませんが、吸入や点鼻のステロイドは副作用も少なく、画期的な予防法となる可能性があります。
近い将来、ステロイドが認知症の予防に使われるようになるかも知れません。