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名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

生態学的研究が見る「相関」は「因果関係」とは大きく違う

公開日: 更新日:

 医学研究には観察研究という方法があり、その中には「事実、実態を示す研究」「原因と結果を検討する研究」があることを紹介してきました。今回はさらに別のタイプの研究です。

 先日、「ラーメン店が多いと、脳卒中死亡リスクが高い」という研究結果が報告されていました。都道府県ごとの脳卒中の死亡率と人口当たりのラーメン店の数の関係を調べています。その結果、人口当たりのラーメン店数が多い県ほど脳卒中の死亡率が高いことが示されたというわけです。目にした方も多いかもしれません。

 この研究は「生態学的研究」という研究方法です。生態学とは「エコロジー」の日本語訳ですが、「エコロジカルスタディー」とも呼ばれます。エコロジカルというと、エコ、環境問題についての研究と思われるかもしれませんが、ここでのエコは環境問題を取り扱う研究というわけではありません。脳卒中の死亡率とラーメン店の数というように、あるものとあるものの相関を見る研究です。

 相関は原因と結果を示す因果関係とは違います。この研究から、ラーメン店が原因で脳卒中死亡という結果が出たとは言えないのです。ラーメン店が多いのは、もともと塩分の濃い食事を好む人が多く、結果として多くのラーメン店が生き残っているだけかもしれないのです。

 この結果を見て、ラーメン店を減らせばいいのかと思った人がいるかもしれません。しかし、ラーメン店を閉鎖したところで、塩分の摂取が減らなければ脳卒中の死亡率は変わらないでしょう。

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