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奥田研爾横浜市立大学名誉教授

1971年横浜市立大学医学部を卒業後、米国ワシントン大学遺伝学教室、ハーバード大学医学部助教授、デューク大客員教授、スイスのバーゼル免疫研究所客員研究員として勤務。2001年横浜市立大学副学長、10年から名誉教授。12年にはワクチン研究所を併設した奥田内科院長。元日本エイズ学会理事など。著書に「この『感染症』が人類を滅ぼす」(幻冬舎)、「感染症専門医が教える新型コロナウイルス終息へのシナリオ」(主婦の友社)、「ワクチン接種の不安が消える コロナワクチン114の疑問にすべて答えます」(発行:日刊現代/発売:講談社)のほか、新刊「コロナ禍は序章に過ぎない!新パンデミックは必ず人類を襲う」(発行:日刊現代/発売:講談社)が8月に発売される。

新型コロナのワクチンはこれまでのものと何が違うのか?

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 2月中旬から医療関係者を対象にした新型コロナウイルスワクチン接種が始まる予定だ。65歳以上の高齢者には4月1日以降の接種を目指しているが、スケジュールは不透明。その上、ワクチン接種には不安も付きまとう。約40年にわたりワクチン開発に従事している奥田先生に疑問をぶつけてみた。

Q:新型コロナのワクチンはこれまでのものと何が違うのか

A:「多くのワクチンは、弱毒化した抗原となるタンパク質やウイルス粒子を接種することで、免疫を高める役割を果たします。例えばインフルエンザや日本脳炎、ポリオなどの予防接種には『不活化ワクチン』を使っていて、これは完全に殺してしまったウイルスを体内に入れることで抗体を作ります。しかし今回、ファイザー社やモデルナ社が開発したワクチンは、メッセンジャーRNA(mRNA=細胞やウイルスの中にある遺伝情報をコピーし、タンパク質の合成で指令を出す物質)を使ったもので、体内に投与すれば細胞内で病原体タンパク(ウイルスの遺伝子情報から作られた抗体タンパク)を人工的に大量に作れるようになるというもの。これらが免疫の獲得に一役買う仕組みで、ワクチンとして人間に実用されるのは初めてです」

 アストラゼネカ社の「ウイルスベクターワクチン」は、2社と違うアプローチで作られた。

「弱毒化したチンパンジー由来の風邪のアデノウイルス(人間の体内では病気を起こさないウイルス)に、新型コロナウイルスの表面にある突起状のタンパク質(スパイクタンパク質)の遺伝物質を含ませたワクチンです。これを接種することで、体内に抗体を作らせます。こちらは体内で複製できませんが、一部感染症(エボラ出血熱)などで人体に使用実績があります」

Q:スピード開発の決め手は何か?

A:一般的にワクチンの開発には7~8年の年月が必要とされる。新型コロナウイルスの感染が最初に中国の武漢で確認されたのは2019年12月8日。その1年後の昨年12月には米食品医薬品局(FDA)が「mRNAワクチン」を承認している。かなりのスピード開発だ。

「mRNAは、これまでも一部のワクチン研究者の間で注目されてきました。ただしmRNAは体内で分解するスピードが速く寿命が短いのが難点で、それを改善するためにmRNAが分解されにくくなる研究が進められてきた。この点を改良したすぐれたものです。今回、動物実験に取り組んだら抗体も高く、実用化されることになったのです」

 現在の技術では、全ウイルスのRNA配列は数時間もあれば判明する。武漢の患者の検体から抗原を割り出し、mRNAを作ることは難しくなかった。ウイルスの変異がRNAウイルスとしては強くないことも大きかったという。

「マラリアは原虫そのものが姿や形、抗原性の性格を変化させますし、エイズはタンパク質の構造をころころ変えてしまう。新型コロナウイルスにはそれほどの変異がないので、大量生産しやすいという決定に至ったのです」

Q:スピード開発で安全性はどうなのか

A:通常は安全性や有効性を確かめるために3段階(フェーズ3)の臨床試験(治験)が実施される。これがあるから実際に接種できるようになるまで時間がかかった。開発から接種までの期間が速いと、少し心配になるが……。

「mRNAワクチンは、人工合成したウイルスの遺伝子を使うため、病原体を使うワクチンとはその点で人体への有害性はほとんどないと考えられています。それと今回は、米国やブラジルなどで感染者が多発したため、治験者の感染予防率、重症化率などの統計が短時間でまとめられた。緊急事態下ですから、承認スピードも速かったといえますが、安全性を軽視したわけではありません」

 ファイザー社とビオンテック社は、昨年11月時点で6カ国4万3500人を対象にした臨床試験の予備解析結果を発表。ワクチンによって「90%以上の人の感染を防ぐことができる」としている。

【連載】新型コロナワクチンの疑問に答える

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