進化した大腸内視鏡検査を受け研修医時代と恩師を思い出す
それから4年ほど後、某がん専門病院でこんなこともありました。私は内科の研修医で、気管支鏡検査の見学をしていました。検査台に仰臥位(あおむけ)になった男性患者が、顎をいっぱいに上げて大きく口を開かされています。そして、そのまま長い真っすぐな鋼製の筒(当時の気管支鏡)を口から入れられました。口腔や気管は麻酔されていたと思いますが、患者は声も出せず、手をバタバタさせています。きっと苦しいのでしょう。
そんな患者に対して、筒をのぞいている医師は「ガマンしろ!」と叫びました。カルテを見ると、患者は某大学の学部長さんでした。
私には、検査を担当していた医師がとても傲慢に思えました。そんな器具しかない時代であり、一人一人に優しくしていたら検査はできないのかもしれませんが、せめて、いたわりの言葉があってもいいのにと思いました。あの時、検査を担当していた医師に対してどうこう言うつもりはありません。ただ、当時の私は、「医師は上位にいて、患者は下位にいる……この検査は拷問だ。患者になるということは、こんな苦痛を受けなければならないのだろうか……」と思わされたのです。