病理解剖によって初めて明らかになることがたくさんある
ご家族は、ご遺体が戻ってくるのを待ち、そして剖検の結果を聞き、死亡診断書をもらって、それから一緒に帰られました。
■病理の先生から多くを教わった
M先生は、普段は厳しく、とても怖い先生でもありました。ある時、外来でリンパ節生検が行われ、採取したリンパ節をガーゼに包んで病理科に持参すると、一目見たM先生は「このリンパ節生検は誰がやったのか? 生検の仕方が悪い」と怒りました。
月1回、大会議室で臨床医を集めての病理科カンファレンスがありました。先に担当医から臨床経過が報告され、その後、病理科から剖検結果の報告があります。そのカンファレンスでM先生が怒り出すと、睨まれた若い医師たちはかわいそうでした。
私は、進行したがん患者を担当していたので、剖検をお願いすることが一番多かったと思います。幸いM先生には睨まれることなく、たくさん教わりました。特にがん病巣の説明は、丁寧に丁寧に教えてくださいました。「好きこそものの上手なれ」という言葉がありますが、M先生は病理学が大好きだったのだと思います。