「物忘れ」とは最近やさっき起きたことの記憶を保持できない
スクリーニング検査は確定検査とは違う。より総合的な判断が必要
認知症になると、認知機能低下(記憶、見当識、言語、注意と集中、計算、学習、思考、判断の障害)のほか、心理・行動症状(幻覚・妄想、不安、抑うつ、易刺激性、脱抑制)、日常生活能力(ADL)の低下など、さまざまな障害が生じます。それらに対しては、複数の評価法が登場しています。
【MMSE(ミニメンタルステート検査)】
「Mini Mental State Examination」の頭文字をとったMMSEは、日本で最もよく使用されている簡易認知機能検査のひとつ。国際的にも通用するものになります。1975年に開発されました。
設問は、全部で11項目。ちょっと長いですが、どういうものかを挙げましょう。
「時間の見当識(『今日は何日ですか?』など)」「場所の見当識(『ここは何県ですか?』)」「物品名の復唱(『桜、猫、辞書』など、質問者が言った3つの単語を繰り返してもらう)」「注意と計算(暗算での引き算や、単語を逆から言う逆唱)」「再生(新しく覚えた記憶を保持し、思い出せるかを確認)」。
さらに、「物品名の呼称(ありふれたものを見せて、名称を答えてもらう)」「復唱(ある程度の長文を質問者が伝え、同じように繰り返してもらう)」「理解(3段階の指示を出し、順番に実行してもらう)」「読解(書かれた文章を読み、その指示を実行してもらう)」「書字(自由に作文)」「図形模写(ある図形を見せ、同じように描いてもらう)」。
各項目で点数が異なります。すべて正解で30点。27点以上が異常なし、22~26点が「軽度認知症の疑い」、21点以下が「どちらかというと認知症の疑いが強い」。ただし、MMSEはスクリーニング検査であって確定検査ではありません。文章理解や記述、描画など、学歴や職歴の影響も受けやすく、また年齢が考慮されていないので、65歳以下では判断が難しい。
【改訂版長谷川式簡易知能評価スケール】
「長谷川式」と呼ばれるこの検査も、日本で非常によく用いられています。年齢、見当識、視覚性記憶、計算、逆唱など9項目で構成されており、30点満点で20点以下が認知症疑いとなります。MMSEにはある書字や図形模写は、長谷川式には含まれていません。
やはりスクリーニング検査なので、長谷川式だけで認知症を判断するのは不適切です。
MMSEも長谷川式も、現代はインターネットで調べればどんな内容かがすぐにわかります。認知機能低下が見られ始めていても、軽症だったりMCI(軽度認知障害)であれば、数値が高くなりがち。繰り返すうちに「学習」してしまうことも。
認知症かどうかを判断するには、より総合的な判断が必要です。