夫の最期を共に過ごすために妻は「介護休業」を活用した
「そうですね。痛い苦しいっていうのは取り除くようにできます。ただ輸血や点滴は、状態が悪くなったタイミングでやると、もしかしたら間に合わないという可能性があります」(私)
在宅医療スタート初日から予後のことなど忌憚なくご家族とお話をしました。それから2週間後、奥さまから電話がありました。
「介護休業を取りたいので、診断書を書いていただけますか? 会社に提出するためです」
旦那さんの状態が急変し、食事が取れないようになり、さらに痛み止めの麻薬で吐き気とせん妄も出てくるように。話しかけても応答がないことが増えたため、つきっきりで介護したいと、奥さま。
介護休業とは要介護状態となった家族を介護するために通算93日取得でき、3分割できます。本件のように介護休業を取り、残された時間の少ない患者さんに寄り添うご家族の方も珍しくありません。厚労省ではこれらの休業休暇の制度を、通院の付き添いや短時間の休みが必要な時に使うことを推奨しています。
実際に当院でも診療時に同席するために介護休暇を使われている方はたくさんいらっしゃいますし、介護休業を取り、残された時間の少ない患者さんに寄り添うご家族の方も珍しくありません。
その後、遠方に住むもうひとりの娘さんもご実家に帰ってこられ、最期をどう過ごすか、ご家族全員で話し合われたといいます。
そんなご家族の意思の実現を支えることもまた、在宅医療の大切な務めだと考えています。