親が身につけるべき「正しい話の聞き方・伝え方」10の原則~⑩
すると、驚くことに突然、お母さまが号泣し始めたのです。そして、「私だって、そういったつらい思いを誰にも弱音を吐かずに一人でがんばってきたんです。それなのに、どうしてこの子の親だからと言って、その気持ちを私が聞かなければならないのですか!? そんなのズルイです!」と、胸の内を明かされました。
そうなのです、お母さまが傾聴・共感できなかった最大の理由は、彼女自身も自らの親との関係で傾聴・共感を十分にしてもらうことが叶わず傷ついた、まさに感情不全を呈していたためだったのです。だから、共感することが非常に苦手だったのです。ただ、その母親の場合、幸いにもBさんほどには繊細で脆弱ではなかったので、ひきこもりや精神科に足を運ぶほどまでにはならず、なんとか踏ん張ってこられたというわけです。
ひきこもりでメンタル不調を来し来院された20代半ばの男性Cさんも、やはり一代で会社を作り上げた父親が自分の話をまるで聴いてくれず、いつも話が自分の武勇伝ばかりに終始し、弱音を吐こうものなら途端に機嫌が悪くなることに苦しめられていたといいます。