親が身につけるべき「正しい話の聞き方・伝え方」10の原則~⑩
「僕にはトラウマがあるんです。中学生の頃、大好きなおじいちゃんが病気で亡くなったのですが、自分は運動部の大会があって、僕だけ死に目にあえなかったんです。その後、姉と弟が、僕のことを人でなしとか薄情者とか責めてきて、僕は耐えられないほどのつらい気持ちになって、自己嫌悪に陥ったんです。でも、未だにこの話を何度、母親にしても、『そんなのしょうがないじゃない』と言われるだけで……。どうしてもこのことが昼夜問わず思い出されて、その苦しみが抜けないんです」
ある日、お母さまがご一緒だった時、私もいるところでBさんが「あの日、本当に僕は苦しかった。今でもそのことが忘れられずに自分を責め続けているんだよ」と話したところ、やはりお母さまの第一声は「しょうがないじゃない」でした。
そこで、私は口を挟みました。
「息子さんは、中学生の頃から10年近くもそのことで一人悩み苦しんでいるとおっしゃるのに、その話を聞いたお母さんの第一声が『しょうがないじゃい』というのはどうなんでしょう? もう少しかけられる言葉があってもいいと思うのですが……。『つらかった』と今、言ってくれているBさんに対してはどう思われますか?」