親が身につけるべき「正しい話の聞き方・伝え方」10の原則~⑩
ある日、息子が心配で来院されたCさんのお父さんから、こんな言葉が聞かれました。
「先生、俺だって親父もお袋もまともに話を聴いてくれなくて、とてもつらい思いをしてきたけれど、なんとか歯を食いしばってここまで死ぬ気でがんばってきたんだよ。なのに、こいつはいつまでも甘ったれたことばかりを言うので許せないんです。俺ができたんだから、息子もやればできるはずなんです」
それに対して私が言った言葉は、「お父さんと息子さんは、親子であっても性格も病気になりやすい体質も違うんですよ」というものでした。そしてこう続けました。
「お父さんにできたことでも、息子さんにはできないことはあります。その息子さんは、お父さんにもっと自分の弱い部分も含めて本音を聴いてもらいたいと願っていて、それができれば今よりはCさんにも良い変化が出るのではないかと思うのです」
父親はその場ではどこか釈然としない顔をしていましたが、思うところがあったのでしょう。後日のCさんのお話では、お父さんは以前より話をよくやさしく聴いてくれるようになり、以前よりも会話が増えたといいます。そしてCさんは、とても気持ちが楽になり、専門学校に入学したいという前向きな気持ちが自然に芽生え出し、現在はひきこもりを脱しておられます。(つづく)