長寿研究のいまを知る(3)なぜ、老化で「テロメア」が注目されるのか
なお、1985年にテロメアの短縮速度を遅くしたり、伸ばす働きがある酵素が発見された。テロメラーゼと呼ばれる酵素で、発見した科学者はのちにノーベル生理学・医学賞を受賞している。
この酵素は普通の細胞では活性化されないが、生殖細胞のほか、日々の新陳代謝で失われる細胞を補うため日々分裂を繰り返している幹細胞(例えば造血幹細胞)、無限増殖を続けるがん細胞で活性化されていると考えられている。
「ならば普通の細胞をテロメラーゼで活性化させれば老化を防げると考える人もいるかもしれません。実際にそう謳ったサプリメントも出回っています。しかし、事はそれほど単純ではありません。テロメアが短くなる速度は細胞により異なり、体全体の細胞を一律に修復したら、不都合が起きないとも限らない。また、テロメラーゼは細胞のがん化に関係することもわかっています。特定の細胞のテロメラーゼだけを活性化させる技術も開発されておらず、実用化はまだ先だと考えています」 (つづく)