長寿研究のいまを知る(3)なぜ、老化で「テロメア」が注目されるのか
根来医師が注目しているのは、テロメア短縮が細胞老化を起こし、これが老化を招くとする「テロメア説」だ。
テロメアとは細胞の核にある染色体の末端部分の構造物で、例えて言うなら靴ひもの末端にあるプラスチック製のキャップのようなもの。ひもの部分がほつれたり、靴穴にひもが通らなくなるのを防ぐのと同じで、生物の遺伝情報が収められている染色体がむき出しの状態となり、別の染色体とくっついたりするのを防ぐ。
「染色体は細胞分裂時にコピーされる際、末端部分が完全に複製されず、遺伝情報が失われます。そこでテロメアは自ら短くなることで染色体の遺伝情報を守っているのです。ただ、細胞分裂回数が50回を超えるともうこれ以上は細胞分裂できない、と細胞が認識して細胞老化、細胞死(アポトーシス)を誘発することがわかっています」
■見た目が若い人ほど長い
細胞老化とは限界まで細胞分裂を果たした状態をいい、その状態の細胞を老化細胞と呼ぶ。老化細胞の蓄積により体内の組織や臓器が衰えていき、個体老化につながる。このため、テロメアの長さが寿命の度合いに関係すると考えられている。