(17)「温活」と長寿…なぜ、温泉やサウナは体にいいのか?
「④タンパク質の恒常性の崩壊は老化を加速させます。例えば、キイロショウジョウバエに終末糖化産物(AGE)などを与えてタンパク質を劣化させると、健康寿命と最大寿命が短縮したことなどが報告されています。逆にタンパク質の恒常性を改善すると老化を遅らせることがわかっています。ヒトのHSP70を実験用マウスの鼻腔内に投与すると、タンパク質分解酵素が活性化して脳内で加齢により増加する細胞内顆粒(リポフスチン)量が下がり、認知機能を向上させ、寿命が延長する効果があったとの報告もあります」
温泉やサウナといった「温活」は良質なタンパク質を維持する司令塔役であるHSP70を活性化する。こうしたメカニズムによって、老化予防に関わっている可能性がある。
「よく、高齢者は加齢による筋肉量の低下による機能低下(サルコペニア)を防止するために、意識してタンパク質を取るように言われます。それも大切なことですが、人が1日で食べているタンパク質は60~80g程度に過ぎず、体内で1日で合成されるタンパク質は160~200gであること忘れてはいけません。人は自身のタンパク質を分解してリサイクルしているわけで、ある意味、体内でのタンパク質の分解・リサイクルをスムーズに行うことは、食事でどんな栄養素を取り入れるかということと同じくらい重要なのです」