「重粒子線」がん治療の基礎知識とこれから…保険適用拡大で注目
「重粒子線」によるがん治療が注目されている。通院回数が少なく、低侵襲性の治療が可能なうえ、従来の放射線にはない治療効果が期待できる。昨年6月からは公的医療保険の適用範囲が拡大された。そこで重粒子線がん治療の基礎とこれからについて江戸川病院(東京・江戸川区)放射線科部長の黒﨑弘正医師に聞いた。
「治療に使われる放射線は大きく2つあります。電荷・重さのない電磁放射線(X線、γ線)と、電荷・重さのある粒子放射線(α線、β線、電子線、陽子線、重粒子線、中性子線)です。重粒子線治療は炭素粒子を光速の約70%まで加速してがんに照射してがん細胞のDNAを破壊する治療法です」
通常の放射線治療は、体外からリニアックと呼ばれる直線加速装置で電子や高エネルギーのX線を標的となるがん組織に照射する。電磁放射線は体表面でエネルギーが最大となり、体内で徐々に弱くなる。ところが重粒子線を含む粒子線はブラッグピークといって体深部の一定の距離でエネルギーが最大となり、それ以上進まないという物理特性がある。
「そのため重粒子線治療は、腫瘍の位置に合わせたピンポイント治療が可能で、従来の電磁放射線を使った治療に比べて腫瘍の周囲の正常細胞のダメージを減らしつつ、より高い治療効果が期待できるのです」