「重粒子線」がん治療の基礎知識とこれから…保険適用拡大で注目
「公的保険の適用が増えたことで、今後はさらに臨床データが集まり、重粒子線の治療効果の優位性がハッキリするでしょう。しかもこの治療法は治療後の社会復帰が容易となる。仕事の忙しい人や手術など従来の治療による肉体的負担に耐えられない高齢者などを中心に重粒子線によるがん治療は増えていくでしょう」
そんな重粒子線治療はいま新たな段階に入りつつあると黒﨑医師は言う。
「重粒子線治療器の小型化・実用化が進んでいます。1994年に稼働した重粒子線治療装置はサッカー場規模の広さで、その後、体育館程度にまで小型化しました。これをテニスコート規模にする試みが進められています。また、昨年には、炭素粒子に加え、電荷・重さの異なる複数の粒子を使った臨床研究が始まりました。放射線抵抗性の強い低酸素領域のがんには炭素より重い酸素やネオンビームを照射し、それ以外のがんには炭素をぶつけるというやり方です」
がん制圧にまた一歩近づきつつある。