「虜囚の犬」櫛木理宇著
ある事件がきっかけでうつ病になり3年間隠遁(いんとん)生活を送っていた元家裁調査官の白石洛の元に、高校時代からの友人で茨城県警捜査1課の巡査部長・和井田瑛一郎が訪ねてきた。白石が7年前に担当した少年、薩摩治郎がビジネスホテルで刃物で刺されて殺されたというのだ。彼は被害者であっただけでなく、自宅には裸のまま首輪でつながれた痩せ細った女性が監禁されており、庭からは2体の死体が発見された。
7年の歳月が流れたとはいえ、薩摩は白石が調査官として担当した2カ月後には高校を中退し、その後引きこもり生活を送っていたこともあり、最後に深く関わったのは白石だというのだ。一体、薩摩治郎とはどんな人物だったのか。白石は、薩摩治郎が、「僕は犬だ」と言いながら壁に頭を打ち付けていたことを思い出すのだが……。
「ホーンテッド・キャンパス」で第19回日本ホラー小説大賞・読者賞を受賞した著者による最新作。心のバランスを崩した経験を持つ主人公が、自らのトラウマと闘いつつも真相に近づいていく。暴力や支配の連鎖のおぞましさを、容赦なくリアルに描いている。
(KADOKAWA 1700円+税)