拡張型心筋症のひとつ「緻密化障害」が注目されている
緻密化していないことそのものは大きな害ではなく、緻密化障害でも心機能は正常に働いているケースもたくさんあります。しかし、中には心室の筋肉の働きが低下して、心筋症の状態になっている場合があり、激しい息切れや不整脈などを起こして治療が必要な人もいるのです。
とはいえ、日本では詳しい発症頻度や予後についてははっきりしていない状況で、診療のガイドラインもありません。そのため、治療もまだ手探りです。一般的には、無症状な場合は経過観察を続け、症状が表れた人には病態に応じた対処が行われます。
心不全を起こしたときは、利尿薬、ACE(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)、ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)、β遮断薬などの降圧剤が使用されます。不整脈の場合は抗不整脈薬を投与し、病状によってはペースメーカーの植え込みが必要になるケースもあります。
■進化する補助人工心臓は有望な選択肢
内科治療では難しいとなると、左室形成術などの手術が行われる場合もありますが、最終的には、補助人工心臓や心臓移植が選択肢になるのが現状です。ただ、移植は世界的にもドナーが不足している状況なうえ、年齢や全身状態によって移植の適応にならない患者さんも少なくありません。そうした事情もあって、現実的には補助人工心臓が有力な選択肢といえます。患者さんの心臓は残して心臓のそばに人工心臓を設置し、落ちてしまった心機能を助けるシステムです。いまの日本では、移植を前提に待機している患者さんの「ブリッジユース(橋渡し)」しか保険適用されませんが、現在、それ以外の患者さんにも保険適用される直前の段階まで来ています。