乳がん<4>「強く推奨」となったハーセプチンによる術前薬物療法
HAR2は細胞の分裂と増殖に関わるタンパク質の一種で、正常な細胞にもあります。ところが乳がん細胞のなかには、それを異常に多く持っているものがあるのです。それが「HAR2陽性」の乳がん、全患者の10%ほどを占めています。増殖力が強く、陰性の乳がんよりも悪性度が高いとされています。
HAR2タンパク質と結合して、その働きを邪魔するのがHAR2阻害薬。代表は分子標的薬のトラスツズマブ(商品名ハーセプチン)です。日本では2001年に、手術できない進行乳がんの治療薬として承認され、順調に適応範囲を広げて、2011年11月には、乳がんの「術前治療」に使えるようになりました。それ以前に術前療法を受けたひとでは、ハーセプチンは使われていませんし、ガイドラインにも出てきません。 最新のガイドライン(2018年版および追補版)には
「HAR2阻害剤と抗がん剤の併用は、高い確率で完全奏効(画像上は腫瘍が完全に消えた状態)を獲得できる」
「手術可能なHER2陽性浸潤性乳がんに術前化学療法を行う場合、ハーセプチンを併用することを強く推奨する」